出産後の身体は見た目にはわからなくても、全身にわたる変化が起こっています。

特に重要なのが骨盤の状態です。

妊娠中に分泌されるホルモンの影響で、骨盤の状態や靭帯が緩み、赤ちゃんを出産するために骨盤は大きく開きます。出産後もすぐに締まるわけではなく、広がったままの骨盤は身体のバランスを崩しやすく、様々な不調の引き金になります。

また、出産による体力の消耗、筋力の低下、ホルモンバランスの急激な変化もあり、身体が思うように動かなかったり、気分が落ち込んだりすることもあります。産後の身体はまさに回復と再調整の時期に入っているのです。

産後の不調としては、腰痛、肩こり、骨盤のぐらつきなどが多くみられますが、これらの症状の背景には主に３つの要因が関係しています。

１つ目は骨盤の歪みと不安定さです。出産で骨盤が広がり、正しい位置に戻らなかった場合、腰や股関節、背骨に負担がかかり慢性的な痛みにつながります。

2つ目は筋力の低下と姿勢の変化です。妊娠、出産により腹筋や骨盤底筋が弱まり正しい姿勢を保つことが難しくなります。お子さんの抱っこや授乳で前かがみになる時間も多く、首、肩、背中への負担が増加します。

3つ目は自律神経とホルモンバランスの乱れです。眠れない、疲れが取れない気分が不安定になるといった症状が現れます。

これらはよくあることとして片づけられがちですが、放置してしまうと不調が慢性化するリスクがあります。

出産によりバランスを崩した身体は、早期にケアすることで本来あるべき状態へと戻すことができます。特に産後2～6か月は骨盤が柔らかく、整いやすい時期でもあります。

この時期を逃さないことが将来的な体調維持につながります。柔道整復師が行う産後ケアは、ただのマッサージではありません。骨盤の位置や可動域、筋肉の緊張や使い方などを評価し、その人に合った施術を行います。施術はバキバキ鳴らすような強い刺激を使わず、身体に負担の少ない手技で行います。

Q出産後しばらく経ってからでも、産後ケアは受けた方がいいですか？
Aはい。出産から時間が経過していても、ケアが遅すぎるということはありません。

出産から半年や1年以上経っていても、骨盤や筋肉のバランスが崩れたままの場合、慢性的な疲れやすさ、姿勢の崩れにつながることがあります。特に子育て中は無意識のうちに体に負担をかける動きが多くなるため、「今更遅いかも…」と思わずに、気になったタイミングでご相談いただくのがお勧めです。

Q産後の不調は年齢によって違いがありますか？
A年齢によって、回復スピードや症状の出方に差が出ることはあります。

例えば、20代前半の方は回復が早い傾向にありますが、30代、40代での出産では疲労感が長引いたり、肩こり腰痛が強く出る方もいます。ただし、年齢に関係なく「正しくケアすれば回復できる」という点は共通しています。無理せず、自分の身体の声に耳を傾けて、適切なサポートを受けることが大切です。